✾ 更年期障害

〝 女は7の倍数 男は8の倍数 〟

◆ 夜景の美しい富山県 富岩運河環水公園のシンボル、天門橋の展望台から撮った夕陽。
◆ 夜景の美しい富山県 富岩運河環水公園のシンボル、天門橋の展望台から撮った夕陽。

 

 薬用養命酒のCMでお馴染みの「女は7の倍数、男は8の倍数」は、身体の節目といわれる年齢を意味します。女性の更年期は45~55歳で、閉経の平均年齢は50歳。

これは、中国最古の医学書「黄帝内経(コウテイダイキョウ)素問(ソモン)」上古天真論によるところの、「腎の働きは7歳で活発になり始め、49歳で衰弱してしまい閉経する。」という東洋医学的な見解による記載内容とほぼ一致しているということが言えるのです。

上古天真論の「上古」とは、大昔の人類の生活が初期段階にあった頃。天真とは、先天的に与えられた腎気・精気のことを意味します。

 

 以下に、上古天真論の原文並びに直訳した説明文を紹介させていただきます。

 

七歳(7歳)腎気盛、歯更、髪長。

 説明:腎の気が盛んになり、歯が生え変わりはじめ、髪も長くなる。

 

二七(14歳)而天葵至、任脈通、太衝脈盛、月事以時下。故有子。

 説明:天葵が充満して任脈がスムーズに通じるようになる。子種育成の原気である

    太衝の脈(衝脈)が盛んになり、月経が始まり受胎することも可能になる。

 

三七(21歳)腎気平均。故真牙生而長極。

 説明:骨が充実し智歯も生え、全部の永久歯が生えそろう。

 

四七(28歳)筋骨堅、髪長極、身体盛壮。

 説明:筋骨ともに充実し、体力的にも一生のピークに達する。

 

五七(35歳)陽明脈衰、面始焦、髪堕。

 説明:顔面を栄養し髪に巡る陽命の脈が衰えるため、容貌はやつれはじめ、

 髪も抜けはじめる。

 

六七(42歳)三陽脈衰於上、面皆焦、髪始白。

 説明:陽明、太陽、小腸の3つの陽経の脈の、頭部に流注しいている部分が衰える

    ために容貌はまったくやつれてしわが多くなり、白髪が目立つようになる。

 

七七(49歳)任脈虚、太衝脈衰少、天葵竭、地道不通、故形壊而無子也。

 説明:任脈は精気がなくなって空虚となり、子種育成の原気である太衝の脈が衰弱

    減少し、生殖の原動力である天葵が尽きてしまい、陰気の通路がふさがって

    しまい閉経を迎える。身体は老い衰えて、身籠ることはできなくなる。

 

 と、以上です。後半で、いささか老化現象を誇張する表現が多用されておりますが、今と昔では人間を取り巻く医学的・衛生的環境や食物の栄養摂取状態・それに伴う平均寿命が明らかに違う点を留意しつつ、けれども現代と共通する部分もあるのだという認識の下でご理解いただきたく、ご参考までに紹介させていただきました。

 

 尚、先の上古天真論に出てくる天葵とは、人体の成長・発育を促進し、月経・妊娠を維持する機能をいいます。文献によれば、更年期障害の基本的な発病機序は天葵の満ち欠けが関与し、天葵が急激に枯渇することが症状の悪化につながるとされており、この辺のところが東洋医学的な治療を進めていく上で大事なポイントになってくるでしょう。

 

ー参考文献:医道の日本 Vol.71 N0.8 「中医学からみた更年期障害の治療」よりー

 


◆ ホットフラッシュ

 

 更年期障害にみられる代表的な症状の1つに、ホットフラッシュがあります。

ホットフラッシュとは、顔のほてり・のぼせのことをいうのですが、以前に発行された鍼灸専門誌によれば、ホットフラッシュに対し灸治療は適さないとありました。これは、温灸などの熱刺激がかえって逆効果になってしまうからなのだとか・・・。

 

 されど、当院では温熱刺激を併用することでホットフラッシュを改善させたことが何度もあります。要は温灸を用いる部位によるのでしょうね。

 

 例えば、健康の鉄則といわれている「頭寒足熱」からも伺い知れるように、更年期障害の患者さんはとかく下半身の冷えを訴えるため、足の三陰交という経穴にお灸もしくは温熱療法を行うことで、冷え症はもとより顔ののぼせ・ほてりに対しても効果があるということなのですよ。

 

 よって、逆効果になるのは上半身に温熱刺激を与えた場合にのみ限られてくるのではないかと考える次第です。

 


◆ 更年期障害を快適に過ごす3か条

 東洋医学の世界では、女性は陰、男性は陽に分けられます。更年期を境に、陰だった女性は陽に、陽だった男性は陰に変わるとされています。そのバランスの崩れが大きいと、更年期障害になりやすくなります。

 

■ 更年期を快適に過ごす3か条

1)栄養も仕事もペースダウンしよう。

2)昼間は外で活発に、夜はのんびりと。

3)人に任せ、心配事は先延ばしにする。

 

- 株式会社マガジンハウスのクロワッサン「漢方・ツボ・薬膳・気功の本」より -

 

 この3か条は、昼と夜のメリハリをつけ、ゆったりした時間を過ごせるよう心がけるという事ですよね。更年期という言葉に臆することなく、心穏やかにして耳を澄ませば、「そろそろ折り返し地点だから、この辺で一服しようか」と我が身にささやきかける声が聞こえてくるかもしれません。打ち寄せてくる波にあえて立ち向かおうとせず、今は体力の温存をはかるときです。ご参考まで。